七
「何が、”どうしたの”なんだ?」
僕は振り向きざまに持っていたラーメンをいれた袋を柚花に投げつけた。
「なぁ。何が”どうしたの”なんだよ。」
柚花はびっくりした顔で立ち止まっている。
走った後の酸素が足りないような、そんな息遣いだけ、聞こえる。
交通人が何だと言う顔でこっちを見ている。
せいぜい、橋の上で喧嘩する仲の良いカップルだとでも思っているんだろう。
ラーメンが、コロコロと転がって、ポチャンと川に落ちた。
ポシャンという音が聞こえたのを確認すると、
「どうして。」
と柚花が震えた声で言った。
「何が。」
僕が気の無い返事をすると、柚花の顔が泣きそうにゆがんだ。
「どうして。」と子供のように繰り返す。
「お前、」
そこでいったん言葉を切った。
柚花の目は、大粒の涙を流すまいと耐えている。
「ふざけるなよ。」
一歩、一歩。柚花に近づく。
僕の雰囲気がおかしいと気づいたのか、近づく度に柚花は一歩下がる。
「さっきから。」
また、一歩。そして近づく度に離れていく。
「何がしたいんだ。」
大きく一歩を踏み出した。
柚花の目に、悲しみの色が写っている気がした。