二
あの頃の僕は、世界中のことが全て間違っているように見えた。
世界中の全てのものが、僕を嫌っているように見え、
そして僕の言うこと、すること、したいこと全てが、間違っているように見えた。
だから僕は、いつもバカみたいに笑っているクラスの皆が嫌いだった。
生徒の暴力を恐れて、びくびくしながら生活している先生も、嫌いだった。
そして、それが当たり前のように、僕は柚花が1番嫌いだった。
僕の見ている限り、柚花はいつもニコニコしていた。
なんていうんだろう、クラスには必ず1人は居る、ムードメーカーってやつ。
柚花は本当にもう、絵に描いたようなムードメーカーで、柚花のまわりには常にたくさんの人が居た。
今も、4,5人で柚花を取り囲んで話をしている。
その中心で柚花は、ニコニコと話を聞いていた。
そんな柚花が、僕は大嫌いだった。
柚花は、綺麗だった。外見とかじゃなくて、もう、そこに居るだけで、綺麗だった。
僕は、綺麗な人は嫌いだ。
だから、当たり前のように柚花のことが嫌いだった。
柚花も、きっと僕のことが嫌いだと、思う。
でも、それは突然訪れた。
僕のくじ引きの引き方が悪かったのか、柚花のくじ引きの運が悪かったのか。
月に1度しかない席替えで、僕は柚花の後ろの席になってしまった。
「よろしく。」
微笑みながら柚花が差し出した手を、僕は無視しながら、次の授業の教科書を机の中からとり出した。
俯いていたので、柚花の表情を見ることは出来なかった。